声(家族・支援者)

聴覚情報処理障害(APD)の理解を広げるためにできること

京都市聴覚言語障害センターでは、毎年「きこえにくい方のためのコミュニケーション教室」を行っています。

2019年度の当事業では、聴覚情報処理障害(APD)に関する講演会(国際医療福祉大学 小渕千絵先生)と当事者交流会(全3回)を行いました。講演会の詳細については下記をご覧ください。

聞き取り困難を示す聴覚情報処理障害(APD)とは?こんにちは。京都市聴覚言語障害センターです。2019年6月15日(土)に、国際医療福祉大学の小渕千絵先生をお招きし、「聴覚情報処理障害(...

今回は、講演会および交流会を通して見えてきたAPDを取り巻く現状や課題について、そしてAPDへの理解を社会に広めるために何ができるのかについてお伝えしたいと思います。

APDを取り巻く現状

どのようなことで困っているか

APDの特徴的な聞こえ方は下記のとおりです。

APDの一般的な特徴

●聞き返しや聞き誤りが多い

●雑音など聴取環境が悪い状況下での聞き取りが難しい

●口頭で言われたことは忘れてしまったり、理解しにくい

●早口や小さな声などは聞き取りにくい

●長い話になると注意して聞き続けるのが難しい

●視覚情報に比べて聴覚情報の聴取や理解が困難である

実際、当センターで行われたAPD当事者交流会でも、参加者から下記のような声が挙がりました。

聞き取った言葉に自信がなく、いつも不安を覚える。

周りの人と比べて話についていけない。ざわついている所では、みんなはわかっているのに、自分だけわかっていない時が多い。

周りの話を聞いて断片的にこういうことかと思い、その断片をつなげて理解して発言している。

臨機応変に行動するのが苦手。パッと聞いて理解してパッと行動することができない。

話が長くなると覚えていられない。聞き返しが多くなる。特に電話は聞き誤りが多い。お客さんの名前を聞き取れず、何回も聞き直して怒らせてしまうこともある。それを避けるためにわからないまま話を続けてしまうことがある。

話を聞きながらメモを取るとか、聞きながら同時並行で何かをすることができない。

「怠けている。聞く気がない」と言われ、辛かった。

APDへの理解を深めるために

周囲に伝えることの大切さ

仕事に就いている方は特に、APDによる聞き取りにくさを周囲に伝えていない場合、下記のような悪循環に陥ってしまう方も多いと言われています。

悪循環の一例

何回も聞き返す  怪訝な顔をされる、イライラされる  何回も聞き返しづらくて、わからないまま自己判断する  ミスが起きて叱られる  仕事ができない、不真面目だ、集中していないと言われる  ストレスがたまる、自信を無くす  心身的不調をきたす  仕事を辞める、転職を繰り返す

APDは、近年様々なメディアで取り上げられるようになった一方で、社会的な認知はまだまだ乏しいのが現状です。APDについて、当事者交流会に参加した方から次のようなお話がありました。

自分の聞こえのことを周りに発信していかないといけないと最近やっと思い始めてきた。でも、具体的にどうしてほしいのか、自分でまだ整理できていない。「聞こえにくいから○○ができない」だけではなくて、どうしたらそれをフォローできるか、どういう協力をしてほしいか、自分自身が必要なことを言えないと、周りの人も何をしたらいいのかわからないのではと感じる

聞こえにくさは外見からではわかりにくく、聞こえ方も個人によって異なるため、ただ「聞こえにくい」と伝えるだけでは、周囲の人は何をしたらいいのか、どんな工夫が必要なのか理解しくいのが現状です。どういう場面で聞こえにくいのか周囲にどうしてほしいのかなど、具体的に伝えることがとても大切になってきます。

ただ一方で、周囲の理解を得ることはとてもハードルが高いことでもあります。交流会参加者から下記のような感想がありました。

聞こえにくさを伝えることで、今よりもっと状況が悪くなるんじゃないかという不安がある。APDをオープンにして仕事を探すとなると、いい条件のところがないかもしれない。自分が障害者ということで自信がなくなるかもしれない
聞こえにくさがあることを職場には伝えている。電話などはなるべく出なくてすむように配慮してもらっているが、休憩時間にグループで食事をすると、話の内容が全く理解できない。APDだと伝えているものの、何回も聞き返しづらくて適当に相槌をうって合わせている。 
聞こえにくいことは同僚に伝えている。飲み会の席は何を話しているのかほとんどついていけないのでできれば参加したくないが、少人数の職場なのでみんなが参加できる日を調整するため、特別の事情がない限り参加せざるを得ない。飲み会の後は心身的にとても疲れる。

自身の聞こえにくさを受け止め、理解し、周囲にわかるように説明することだけでも、当事者は多くの心理的負担を強いられます。それに併せて、周囲に伝えても困り感が解消されない場合や、そもそも伝えたくても伝えられない環境下にある場合など、日常生活において様々な悩みを抱えながら暮らしている当事者がたくさんいるのが現状です。

当事者会の役割

「誰にも相談できず一人で悩んでいる」「どのように周りに理解してもらえばいいのかわからない」という声は、APD当事者から多く寄せられます。医療機関を受診し、APDの診断を受けて終わりではなく、周囲の協力や理解をどう得るか、実際の生活場面でどのような工夫ができるか、どのようにAPDと向き合っていくかがとても重要になります。

当事者が抱える様々な悩みを共有できる場として、APD当事者交流会があります。2019年12月現在、「東京」「仙台」「大阪」「栃木」「福岡」の5か所に設立されており、定期的に交流会や講演会が行われています。

当事者交流会では、APDについての正しい知識を得たり、同じ悩みや困り感を共有したり、生活に役立つ工夫方法を相談しあったりすることができます。安心して話せる場があるということは大きな心の拠り所にもつながります。また、当事者交流会での出会いを機に、新しい一歩を踏み出すための大きなきっかけを得られるかもしれません。

当事者会で共有される様々な声は、一般社会におけるAPDへの理解を促進するうえで、とても大きな原動力になります。APD当事者会の活動が全国にさらに広がり、より多くの声を社会に向けて一層発信することで、社会を変える大きなうねりを生み出すことができればと強く願います。

さいごに

APDについてのご相談は、お気軽に下記までご連絡ください。まだまだAPDに関する理解や利用できる社会資源は少ないのが現状ですが、相談者さん一人ひとりの悩みに合わせて、一緒に考えていきたいと思っています。

京都市聴覚言語障害センター

●所在地:京都市中京区西ノ京東中合町2番地

●連絡先:075-841-8337/FAX:075-841-8312

●受付時間:9:00~17:00(平日 月~金)

2020年2月1日(土)に、当センターにおいて「きこえを補う情報機器展」を行います。スマートグラスや音声認識機器など、様々な機器を実際に体験していただけます。申し込みは不要、入場料は無料ですので、ご都合が合いましたらぜひいらしてくださいね。

聞こえを補う情報機器展の詳細はコチラです。