こんにちは。京都市聴覚言語障害センターです。電車に乗ったり街中を歩いていると、ヘッドホンやイヤホンで音楽を聴いたりゲームをしている光景に必ず出会いますよね。そんなごく日常の光景ですが、実はその背景にはきこえにくさ(=難聴)につながる大きなリスクが潜んでいることをご存知ですか。
今回は、近年若者に増加している「ヘッドホン(イヤホン)難聴」についてお伝えします。
ヘッドホン(イヤホン)難聴とは
ヘッドホンやイヤホンで大音量の音楽を聞き続けることにより、きこえの細胞(有毛細胞)が徐々に壊れて起こる難聴です。ヘッドホン(イヤホン)難聴は、じわじわと進行し、少しずつ両方の耳の聞こえが悪くなっていくため、初期にはなかなか難聴に気付きません。他の症状として、耳閉感(耳が詰まった感じ)や耳鳴を伴う場合があります。
WHO(世界保健機関)では、11億人もの世界の若者たち(12~35歳)が、携帯型音楽プレーヤーやスマートフォンなどによる難聴のリスクにさらされているとして警鐘を鳴らしています。
きこえ方の特徴
初期のヘッドホン(イヤホン)難聴は、高い音域(4,000Hz付近)が聞こえにくくなります。下図はヘッドホン(イヤホン)難聴の聴力検査結果の一例です。
私たちが普段話している音声は、下図の通り、各音によって含まれる音域の高さが異なります。例えば、母音(アイウエオ)は比較的低い音域、s,k,tなどの子音は高い音域に位置します。
先程示したヘッドホン(イヤホン)難聴の聴力検査の結果をこのグラフに重ねると下図のようになります。それぞれの音の領域より下に聴力グラフが位置している場合は、その音が聞き取りにくくなります。
ただし、4,000Hz付近だけが下がっていても、日常会話に必要な音域の大部分は聞こえているため難聴を自覚することはほとんどありません。
ヘッドホン(イヤホン)難聴の原因
下表は、身近な生活音の音の大きさを表したものです。
120㏈:飛行機のエンジン近く
110㏈:自動車のクラクション(2m)
100㏈:電車が通る時のガード下
90㏈:パチンコ店内、犬の鳴き声(5m)
80㏈:地下鉄の車内、ピアノ(1m)
70㏈:掃除機、セミの鳴き声(2m)
60㏈:一般的な会話の音声
WHOでは、「80dBの音量を1週間当たり40時間以上、98dBの音量を1週間当たり75分以上聞き続けると、難聴の危険がある」と提唱しています。また、音が大きくなればなるほど、聞く時間が短時間でも難聴になるリスクが高まります。
ヘッドホンやイヤホンの音源は鼓膜に近い分、音の減衰が少ないため、有毛細胞が障害を受けやすくなります。
ヘッドホン難聴を防ぐために
ヘッドホンやイヤホンで音楽を聞く場合、65㏈程に音量を抑えることでヘッドホン難聴になるリスクを下げる事ができます。
音量を下げる以外にも、ヘッドホン(イヤホン)難聴を防ぐために以下のことが提唱されています。
・連続して聞かずに、こまめに休憩を挟む。ヘッドホンやイヤホンで聞いた3倍の時間は耳を休ませる。
・使用を1日1時間未満に制限する。
・周囲の騒音を低減する「ノイズキャンセリング機能」のついたヘッドホンやイヤホンを選ぶ。
電車内や街頭などでヘッドホンやイヤホンを使用する場合、周囲の雑音もあり、ついつい気付かぬうちに音量が大きくなってしまいがちです。
適切な音量で使用していても、疲れている時や睡眠不足の時など、体調によっても影響を受ける場合があります。規則正しい生活をするとともに、もし、耳がつまった感じがする、耳鳴りがする、会話の声が聞き取りにくいなど、いつもと違うなと感じることがあれば、すぐにヘッドホンやイヤホンの使用を止め、耳鼻科を受診してください。
講演会のお知らせ
京都市聴覚言語障害センターでは、講師の先生をお招きし、「ヘッドホン難聴」についての講演会を行います。日程は下記の通りです。
●日時:2019年9月8日(日)13:00~15:00
●テーマ:「若者に増えているヘッドホン難聴ときこえに関する最新の知見について」
●講師:二之湯 弦氏(京都府立医科大学 耳鼻咽喉科教室 病院助教)
●内容:ヘッドホン難聴の原因や治療・予防方法についてや、きこえに関する最新情報をお話していただきます。
●会場:京都市聴覚言語障害センター(京都市中京区西ノ京東中合町2番地)
※詳細および申込方法については、きこえにくい方のためのコミュニケーション教室をご覧ください。