地域・社会資源

難聴者・中途失聴者のためのパソコン講座|聞こえにくさがあっても安心して学べる場づくりを

こんにちは。京都市聴覚言語障害センターです。

聞こえにくさがあると、コミュニケーションや人間関係の難しさなどから、離職や転職を行う方の割合が一般と比べて高いことが報告されています。また、難聴者や中途失聴者が就業に役立つ講座を受講したいと思っても、文字や手話による情報保障がない場合が多く、安心して学べる場が乏しいのが現状です。

このような中、京都府城陽市にある京都府聴覚障害者センターでは、難聴者・中途失聴者向けの様々なスキルアップ講座を行っています。今回はその中から「パソコン講座」の様子をお伝えします。

聞こえにくい方のためのパソコン講座

取材させて頂いた日は、2名の方がパソコン訓練を受けていました。講師は、京都府聴覚言語障害センターのパソコンに精通した職員が務めます。講師自身も難聴があり、補聴器を装用しています。

写真右の緑色の服の女性は牧野さん。奥の紺色の服の女性は工藤さん。真ん中は講師

真剣な表情で学ぶ受講生は、お二人とも70歳代。数年前までパソコン関係は全くできなかったそうですが、現在は週に2回講座に通い、ワードやエクセルを学んでいます。

個別に応じた訓練を受けることができる

パソコン講座では、「P検」取得を目指した訓練を受けることができます。

P検とは?

P検とはICTプロフィシエンシー検定試験のことで、P検協会(ICTプロフィシエンシー検定協会)が実施する民間の検定です。上から1級、2級、準2級、3級、4級、5級の6レベルがあります。約250大学・短大で「入試優遇」「単位認定」に指定されています。

牧野さんと工藤さんの目標は「P検4級に合格する」ことです。

お二人が学んでいるP検4級のテキスト
取材時の学習テーマは「エクセルで支店別売上表を作る」でした
わからない箇所は講師が丁寧に指導します
真剣に作業を進めるお二人。完成までもう一歩です
「できた!!」 表が完成して安堵の表情を見せる牧野さん

安心して学べる

講座では、手話や筆談を併用しながら丁寧な指導を受けることができるので、聞こえにくさがあっても安心して学ぶことができます。

手話で説明する講師
受講生にあわせて、筆談も多用します
終始和やかな雰囲気で、笑いが溢れる講座でした

受講者の声

パソコン講座を受けようと思ったきっかけは?

牧野さん
牧野さん
私は宇治の難聴者協会に入っているんですが、事務局長になったんです。パソコンや機械ものが全然ダメだったけれど、協会で機関紙を作っていてパソコンが絶対必要になったんです。それでこの講座で教えてもらうようになりました。
工藤さん
工藤さん
私も難聴者協会の役員になってから地域のパソコン教室に通うようになりました。機関紙の原稿を書いたり、絵を付けたりできるようになったけれど、京都府難聴者協会の理事になった時にパソコンでEメールをするようになったんです。資料を取り出して見たり、資料を作って送ることが必要になったけれど、やり方がわからなかったのでここで教えてもらうようになりました。要約筆記の養成講座の講師をする時にパワーポイントを使いたくて、それもここで学びました。

受講した感想は?

牧野さん
牧野さん
やることやること初めてのことばっかりで、次来たときには全部忘れてしまいました。でも、本に沿って教えて頂くのですごく分かりやすいです。試行錯誤しながら、失敗を繰り返しながら、やっとパソコンで機関紙を打てるようになりました。これまでパソコンは全然関係ないと思っていたけれど、難聴になってパソコンは必要と感じました。でも、役員にならなかったら必要だけれど覚える気にはならなかったかも(笑)
工藤さん
工藤さん
目標を持つことが大事だと思います。文章を書いたり、写真を取り込んだり、普段自分が使うことだけではなく、棒グラフやエクセルで計算するとかしっかり身につけないと検定は合格できない。元々はこういうことは苦手だけど、色々なことを習うことで視野が広がります。学んだことを使う範囲が広がれば自分も楽しいし、目で見て分かりやすいものを提供できたらいいな思います。ここで習ったパワーポイントを使って、去年難聴者協会の福祉祭りのパネルも作ったんです。好きなことだけじゃなくて、普段使わないことも検定を受けてしっかり身につければ、他のことにも使えるかなと思います。
お二人が作成に携わっている宇治市中途失聴・難聴者協会の機関誌「はと」

講師より皆さんへ

講師として大切にしている点や思いについてお聞きしました。

まずは楽しんで覚えてほしいです。ワードよりもエクセルの方が難しくて無理という方も多いですが、順番を覚えたら簡単にできるということを分かって頂いて、「パソコンを覚えたらこんな楽しいことがいっぱいあるんだ」と知ってもらえたら嬉しいです。

「仕事でこんなスキルがあればもっと働きやすくなる」など具体的な希望があれば、訓練のカリキュラムもそれに応じて変更できます。あと、訓練の場は技術を身につけるだけでなく、同じ難聴の仲間もたくさんいるので、気軽に仲間を作れる場でもあることを体感して欲しいです。

その他の講座カリキュラム

●手話学習

「入門」「初級」「上級」「手話単語学習講座」「絵本を使った手話学習」など、レベルに合わせた講座を受けることができます。

●IT学習

パソコン、タブレット、スマホなど、便利な機器の使い方を学習します。希望者はさらに上級のパソコン講座を受けることができます。

●調理学

調理師免許取得を目指します。併設のカフェで実務経験を積むことができます。

●聞こえや補聴器、読話、福祉制度など、くらしに役立つ学習

言語聴覚士や相談員による学習、個別相談を受けることができます。

講師
講師
上記以外にも「こんな訓練を受けたい」などご希望があれば、お気軽に相談してくださいね。

利用の仕方

利用できる人

●聴覚障害の身体障害者手帳をお持ちの方

●その他の障害者手帳をお持ちで、軽中度の難聴のある方

講師
講師
コミュニケーションや日常生活で不便や困難を感じておられる方、仕事に役立つスキルを身につけたい方、生き生きとした生活を送りたい方など、お気軽に見学に来て下さいね。

利用できる地域

当センターまで通所が可能であれば、府県や市町村に関係なくご利用できます。

※送迎が必要な方はご相談ください

講師
講師
京都府以外に住んでおられる方もご利用できます。

利用料

法律で定められた利用者負担と、食費・材料費などの実費負担があります。

体験(お試し)利用の方法

まずは一度、体験にお越しください。体験申込みの流れは下記の通りです。

①京都府聴覚言語障害センター(下記のお問い合わせ参照)までご連絡ください。

②職員が担当の相談員を紹介します。相談員と相談の上、体験利用申し込みを行います。

③体験利用日は毎週金曜日の午後ですが、都合が合わない場合は調整も可能ですのでご相談ください。

講師
講師
ご不明な点がありましたら、いつでもお気軽にご相談ください。

お問い合わせ

〒610-0121 城陽市寺田林ノ口11番64

 

社会福祉法人 京都聴覚言語障害者福祉協会
京都府聴覚言語障害センター
京都府情報コミュニケーションプラザ(JR城陽駅から徒歩5分、コープ城陽の隣です)

 

TEL:0774-30-9000 FAX:0774-55-7708

URL:http://www.kyoto-chogen.or.jp/communityplaza/index.php

さいごに

受講生のお二人とも、とても生き生きと楽しそうに学習に励んでおられる姿が印象的でした。聞こえにくさがあっても、安心して学べる環境で、色々な目標に向かって挑戦できたらいいですね。少しでも興味・関心を持たれた方は、お気軽に京都府聴覚言語障害センターまでお問い合わせください。


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