はじめに
聞こえの健康支援とは「医療支援」「心の健康支援」「社会参加支援」
「情報保障支援」「環境整備」等を提供する総合的な支援構想です。
一般社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会は、補聴器供給システムの在り方研究会の調査結果をもとに、「聞こえの健康支援」の必要性を訴えています。
一方で、難聴者に対する支援の現状は、「補聴器」や「人工内耳」によって難聴者の聞こえの改善を図る医学的リハビリテーションに比重が置かれ、
「障害の理解」「必要なサービスの活用」「主体的な生き方の確立」「社会参加の促進」
といった社会リハビリテーションが極めて遅れた状況にあります。
そのため、医療や補聴器などによって聞こえの改善が期待できない人の場合、聞こえにくさから人との交流が減少し、家庭においてさえ孤立する場合が少なくありません。
綾部市における難聴者支援の歴史と現状
難聴者協会綾部支部の発足と耳のこと相談
1982年綾部市に聴覚障害者の他に精神障害や知的障害のある、
いわゆる重複聴覚障害者を対象とした授産施設「いこいの村栗の木寮」が開所しました。
この施設の設立がきっかけになり、難聴者協会綾部支部が1983年2月発足し
同年7月には第一回「耳のこと何でも相談会」(現「耳のこと相談」)を開催しました。
現在は綾部市社会福祉協議会に事務局を委ね、以下の6団体が運営員会を構成して、取り組んでいます。
・京都府中途失聴・難聴者協会綾部支部
・綾部市要約筆記サークル「みみずく」
・綾部市民生児童委員協議会
・綾部市社会福祉協議会
・NPO法人わいわいネットなかま
・綾部市聴覚言語障害者支援センター
綾部市では、65歳以上の約3人に1人が難聴者であると推測できます。
また、推定難聴者数が約3,600人に対し、耳のこと相談での相談者数が
2桁にとどまっており、更なる呼びかけや普及が必要と考えています。
そして、再来相談者の割合が増加している事から、
継続した相談のニーズがあることが分かります。
2020年度はコロナ禍のため、綾部市内を巡回した相談ができず、
聞こえの啓発冊子や動画を作成して広く市民への啓発と普及に努めました。
また、2021年度以降には作成したDVDと冊子を活かして、
NPO法人わいわいネットなかまが「耳のことあれこれ講座」を実施し、
市民への幅広い啓発活動を実施しています。
手話コミ条例制定
綾部市には、2018年4月に施行された「綾部市手話言語の確立及び多様なコミュニケーション手段の促進に関する条例」(通称 手話コミ条例) があります。
条例の目的は、誰もが障害の有無にかかわらず、手話やその他さまざまなコミュニケーション手段を活用することにより、 お互い尊重しあい、つながり合える共生社会を実現することです。
条例の中には「コミュニケーションをあきらめない」という言葉があり、
誰もがコミュニケーションをあきらめることのない綾部の街を目指しています。
②へ続く
綾部市聴覚言語障害者支援センター
今西永里